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玄海樓店主のきまぐれなひとこと
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どなたにでも判る様ご説明しますと
「一毛録」と致しましたのには訳がありまして・・・。




「九牛一毛」という言葉があります。
九頭の牛の中の一本の毛、すなわち極極僅かな部分や些細な事や物の例えです。

類義語に「大海一滴」「滄海一滴」「滄海一粟」などがあります。


人間誰しも自分自身に誇りや自信を持っている、いや持ちたいものです。

ある程度年齢を重ね、物事の分別がついたり、あるいは地位や名誉を得たり
富裕な環境に恵まれると、きっと何かを失い、忘れてしまう事があると思います。

が、それが人間である事なのかも知れません。
かくいう私はその事を口にするのにも程遠いとは存じますが。


ヒトは目一杯生きられても100年程です。


私はこの業界に入りこれまでに感じた事は、

どれだけ経済的に豊かになっても、幾多の素晴らしい美術品を買い占めることは不可能であり、

どれだけ眼が利いても完璧に真贋や適正な選別をすることも不可能であり、

また無数に美術品を蒐集したとしても、それらを永久に全て自分の所有物とすることも
不可能であるということです。

モノはたった一人の人間が生存している年数など比べ物にならない程
これまでの歴史を生き抜いていますし、これからも存在し続けるでしょう。

それ故モノにこそ徳があり、その徳を少しでも感じ且つそれに恥じぬよう商いをしてゆきたい、
とそう思います。


佳い品に出逢う度に自分の過小なる事を痛感します。


だからこその「一毛」なのです。

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